Aleister Crowley の魔術儀式 : Enochian Aethers
前置き
Aleister Crowley が執り行った魔術が話題の動画。公開されて僅か数日で 15万回近く再生されている。
日本では魔術、特にこの手の難解な魔術体系に興味を持つ人間はごく少数の筈。UFO ファン/マニア の大半は魔術に無関心だが、過去記事で幾度も取り上げた LAM の件でもわかるように UFO と魔術は無関係ではない。LAM も UFO もその本質は虚構であり、マニアが 想定/期待/願望 する形では実在しない。
この動画の主題である Aleister Crowley の魔術儀式( Enochian Aethers )で出現した魔的存在とのやり取りとその結末について、魔術的には様々な解釈が成り立つ。だが、その本質は時間をかけた周到な準備(=魔術の儀式)によって引き起こした意識障害であり、召喚された魔的存在も魔術的な超越(=「深淵」を乗り越えること)も、その意識障害の副産物でしかない。
その意味で、真の意味で 魔術的な「深淵」を乗り越える とは、その魔術的な「深淵」がまるごと虚構であると見抜くことだと言える。Aleister Crowley もその弟子も自ら生み出した虚構の大迷宮の中で彷徨い続け、偽の理想郷のドアに誘い込まれてしまった。世の宗教者、精神世界の探求者も全く同じ地下迷宮に呑み込まれ続けてきた。
要旨
クロウリーとニューバーグの儀式: エーテルの登攀
この音声起こしは、「エーテルの登攀: クロウリーとニューバーグの儀式」というポッドキャストからの抜粋で、悪名高いオカルティスト、アリスター・クロウリーと彼の弟子ヴィクター・ニューバーグが1909年にアルジェリアのサハラ砂漠で行った、エノク語エーテルへの28日間にわたる危険な魔術的アセンション(上昇)の試みを概観しています。
この儀式は、アビスのデーモン、クロンゾンと対峙し、ニューバーグのトラウマ的な犠牲を伴うセクシャルマジックを含むものでした。話者であるMr. Mythosは、この論争の的となる出来事の歴史的、魔術的背景を探り、それが二人の男性に及ぼした永続的な心理的影響と、魔術的効能と倫理に関する議論を提示しています。
目次
- 前置き
- 要旨
- 全体俯瞰 : エーテルの登攀:クロウリーとニューバーグの儀式
- エノク魔術の核心:30のエーテルと深淵の探求ガイド
- アルジェリア砂漠での魔術作戦(1909-12-06)
- エーテル登攀の背景と目的
- エーテル登攀前の試練と準備
- エーテルのビジョンと変容
- 作戦の余波と遺産
- 作戦の余波と遺産
- 情報源
- 文字起こし
全体俯瞰 : エーテルの登攀:クロウリーとニューバーグの儀式
要約
このブリーフィング資料は、1909年12月にオカルト主義者アレイスター・クロウリーと彼の弟子ヴィクター・ニューバーグがアルジェリアの砂漠で行った、28日間にわたる魔術儀式「エノク・エーテルの探求」を総合的に分析するものである。この儀式の目的は、エノク魔術体系における30の宇宙的次元(エーテル)を体系的に踏破することであった。この試みは、参加者に狂気や死をもたらすとされる極めて危険なものと見なされていた。
本儀式の中核をなすのは、クロウリーとニューバーグの間の複雑かつ虐待的な師弟関係、自我の完全な破壊を目的とした「パンへの犠牲」として知られる性的魔術儀式、そして「深淵の悪魔」コロンゾンとの物理的対決というクライマックスである。 儀式の結果、クロウリーは自身の魔術体系「セレマ」の神学的基盤を確立したが、ニューバーグは深刻かつ永続的な精神的トラウマを負うことになった。
本文書では、この儀式の歴史的背景、魔術的体系、主要な出来事、そして参加者に与えた長期的影響について詳述する。また、クロウリーの儀式が真の霊的達成であったか、あるいは制御不能な無意識の力に支配された結果であったかという専門家の間で続く論争にも触れる。最終的に、この出来事は霊的探求、天才性、そして残酷さが交錯する中で、師弟関係における搾取と倫理的失敗の深刻な事例として分析される。
1. 序論:アルジェリアの砂漠における対峙
1909年12月6日、アルジェリアのサハラ砂漠で、詩人ヴィクター・ニューバーグは砂に描かれた魔法円の中に一人立っていた。彼の師であるオカルト主義者アレイスター・クロウリーは、数フィート先の三角形の中に座り、言語よりも古い存在を召喚した後、沈黙し不動となっていた。クロウリーの姿が変容し始め、ニューバーグに語りかけたとき、警告されていたにもかかわらず彼は応答してしまった。その瞬間、その存在は魔法円を破りニューバーグに襲いかかった。彼は神聖な神の名を叫びながら魔術的な短剣で応戦した。この出来事は、クロウリーとニューバーグが「深淵の悪魔」コロンゾンと対峙した とされる、1ヶ月にわたるエノク・エーテル探求のクライマックスであった。
2. 主要人物と動機
アレイスター・クロウリー:預言者にして魔術師
当時33歳のクロウリーは、登山家、詩人、儀式魔術師として知られていた。彼は自身のオカルト教団「A∴A∴ (銀の星団)」を設立し、自らを新時代の預言者と信じていた。1909年夏、彼は複数の岐路に立たされていた。
- 個人的側面: 妻ローズ・エディス・ケリーの深刻なアルコール依存症により結婚生活は破綻し、離婚手続きの最中にあったクロウリーは、イングランドからの逃避を望んでいた。
- 魔術的側面: 彼はA∴A∴の権威と自らの指導者としての地位を確立するため、至高の霊的達成となる画期的な成果を求めていた。
- 預言的側面: 自身の預言的役割を記した奇妙なテキスト『法の書』を再発見し、自らの神聖な使命を世界と自身に証明する必要性を感じていた。
アルジェリアでのエーテル探求は、彼にとって単なる魔術実験ではなく、自らの神聖な使命を証明するための賭けであった。